春のきまぐれ/本木はじめ
 
アバウトなボーイだ僕は消えかかるはっきりしない夕焼けが好き


地中海さまよう防水スーツ着て潜れど故郷の海が離れづ


四方から取り囲まれる山賊の最期に目にした蒼いゆふぐれ


花束を抱えて走る花屋からきみの元まで出来る花道


屈折す水中光の曲線を好んで描く春の気まぐれ


五次元に散りゆくさくらのいろのこといろいろ語った四時限のあと


重油船転覆してゆく凪いだ海インクの染みのひろがるさまは


朝焼けを浴びるあなたの額から汗がながれる春の朝練


麻酔薬乱用すればもう二度と彼岸花とは呼べないあの世


どこまでも飛行機雲を追い続ける子供に
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