春のきまぐれ/本木はじめ
 



制服に付いたかなしみ消えぬゆえ焚き火で燃やす赤いせつなさ


剣山を握るくらいに後悔はじわりとひろがり固まる黒い血


白黒をはっきりつけたい夜もある十字に流れる花火のゆくえ


均衡を保っていますシーソーの影に過ぎないぼくらの駆け引き


じゃがいもを食べに行きますそう言って冬の夜中に鍬を持つきみ


心配し電話している少年の母に届いた風邪の便りで


鬼ごっこしている少年少女らが森でかくまう瀕死の盗賊


まぼろしのような否定は科学では解明できない犠牲の美学


荒城で待ち合わせするふたりきりの戦となるやも知れぬ駆け落ち


アバ
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