春のきまぐれ/本木はじめ
和
少年と少女の袖が触れ合った今年の春のはじまりの合図
ジョイディヴィジョン聴きつつワインを注ぐとき愛がふたたびぼくらを分かつ
廃ビルが変化してゆく街並みを見ている少年少女の墓上
見続けていますあなたの泣きぼくろ鬱になるまで暗くなるまで
わかれゆくふたりのあいだにあるとびら思い出螺旋は下るしかない
防護服からはみだしている黒髪が変色してゆく爆心地の夜
靴下を片方脱ぎ忘れたゆえ?夢でわたしは骨折してた
飲み会の帰りに食べたラーメンがうまかったと言う定年の父
松林の奥で見つけた思い出の廃車の中で眠るぼくたち
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