金平糖草と野うさぎ/愛心
 
ん、お花さん、嗤わないでくださいな。」
野うさぎを叱った花が、その小さな色白の顔を柔らかい尻尾にそっと寄せました。
「笑ってしまってごめんなさいね。あんまりにも可愛らしいことを訊くものだから。」
野うさぎは花に向き直ると、ビーズ玉のような眼で見つめ、じっと答えを待ちます。花はころころと咳払いをすると、一斉に囁くように唄いました。

今は夜。 のちに朝。
星のわたし。 大地に戻る。
美しい声。 わたしのすべて。
わたしは花。 一輪の花。

唄が終わると、野うさぎはふーう、と長いため息をつき、うっとりと地面に寝そべりました。
「ぼくにも、こんな声が、だせたらなあ。」

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