絆創膏と紙コップ/ホロウ・シカエルボク
 
という絶対的な事実だけが自慢気に伸し掛かっていた。
 「娘さんも可哀想にね。」
 ん、ん、とマスターが奇妙な相槌を打った。なに?と俺は聞いた。
 「あの人の娘さん、亡くなってるんですよ…五歳の時に。」


 「どういうこと?」
 「彼の車で家族旅行に出かけましてね。母親は仕事の都合で後に合流することになってました。高速道路で、酒気帯びのトラックがおかしなタイミングで車線を変更して…運転席に激突して、彼は大怪我を負いました。娘さんは助手席に居たので、かすり傷で済んだのですが、ドアを開けて外に飛び出して、後続車に撥ねられました。手当をしようとしたのか、意識を失っている彼の横には、水の入っ
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