絆創膏と紙コップ/ホロウ・シカエルボク
 
をやっているんだろうという思いにとらわれないくらいの経験は積んでいた。人生にはあまり意味を求めるものではない。日常に転がっていることの大半には大した意味はない―まあ、そんなことどうだっていいことだけど。浮かれた夏に人々が疲れを見せ始めて、風が少し涼しくなり始めた秋のはじめ、俺はまた気まぐれにあのバーに顔を出してみた。ああ、とマスターが笑顔で会釈した。スツールに座って、注文をし、ぼんやりと飲んでいると、マスターが話しかけてきた。
 「このまえここでご一緒したお客様のこと、覚えてます?」
 紙コップの?と俺が言うと、マスターは頷いた。
 「あの人がどうしたの?」
 亡くなられました、とマスター
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