キリストとフクロウ/ホロウ・シカエルボク
 
るで違うところに居るのではないか、そんな気がしていた。街から、他人から、慣れた場所から離れ過ぎたせいなのだろうと思った。スマートフォンを取り出して時間を確認した。もうすぐ昼になるところだった。そして電波はもう拾えていなかった。プレイヤーを起動して、純粋だったころのU2のアルバムをフルボリュームで流しながら歩いた。聖域を孕んだ得体の知れない樹海で聴くのに適した音楽なんてそれしか思いつかなかった。アルバムが二周したところで、ようやく道の終わりがあった。


そこは開けていて、根っこからすべて刈り取られたみたいにあらゆる草が存在しなかった。下に岩があるのか、土の感触は浅かった。その真ん中に、俺の背
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