鮮やかな流血のまぼろし/ホロウ・シカエルボク
て不具合もなかった、ただただ血まみれになった自分自身のビジョンが亡霊のように憑りついているだけだった、頭を振ったり―腕を回したり、そんな真似はいっさいしなかった、無意味だと判っていた…そんなことでどうにかなるくらいなら、この血は初めから流れ出してくることはなかっただろう、生身のことだろうと内奥のことだろうと…それは流れるべくして流れ出してきたものなのだ、髪の毛や、シャツが真っ赤に濡れて張り付くのを感じる、まるで不自由な皮膚のように―ラジオで流れているバンドは、失われた愛を嘆いている、それは死に似ている…馬鹿なことを言うと思われるかもしれないが、初めて聴いたわけでもないその懐かしいナンバーは、その歌
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