鮮やかな流血のまぼろし/ホロウ・シカエルボク
 
の歌の中にある喪失は、その夜の瞬間確かに死と同じようなものだった、それは温度と同じようにそんなふうに感じられた、俺は無意識に右手で―本当にはありはしないべっとりとへばりつく血液を拭い取ろうとしていた、それはやはり空振りをして、ただ前髪を少し払っただけだった…だからといってべつにどうということはなかった、そんなことは初めてではなかった、ただいままでのものとは少し、アプローチが違っていたというくらいのことで―そう、そんなふうにある意味で露骨なアプローチはなかった、重く沈み込むビートのような鼓動がそこにはあっただけだった、そう、モールス信号を読み取ろうとしているみたいに、俺はそれに耳を傾けているだけだっ
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