ちいさなちいさなことばたち/田中修子
 
ラムネ瓶叩き割って
ビー玉だしてしゃぶってた

もう蓋開いて取れるんだって
したら欲しくなくなっちゃって

薄青甘い味
記憶の舌

記憶だけ溶けない
えいえんに瓶の中

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「お船とお花」

壊れて空き地に捨てられた
錆びだらけの
ちいさな漁船によりそって
菜の花が笑ってた
ムラサキハナナも揺れていた
向こうに海の音もした
たくさんたくさん働いて
いまはきっと虫や猫の寝床だろう
いつか壊れてしまうなら
あんながいいな


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「花曇り」

薄曇りの日は
きぶんがなんだか
ドヨドヨ ドヨヨン ドヨヨン ドン
ムームー 
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