陽炎/ホロウ・シカエルボク
 
た、そのときにはまだきみ自身にもわかっていなかった、きみはそれから地下鉄に乗ってとなり街まで出かけ、最初にすれ違った女子高生を一撃で殴り殺した、きみはそのまま歩き続けた、そこは寂れたニュータウンで、めったにひととすれちがうことなんてなかった、きみの凶行を目撃したものもだれも居なかった、そしてそんなことはきみにはどうでもいいことだった、それどころか、自分がいまなにをしているのかということさえも、きみにとってはどうでもいいことだった、つぎは住宅地の少し奥のほう、ほんの少し急な斜面を上って行った先でひとりの老婆とすれ違った、老婆はにっこり笑ってこんにちはと言い、きみも笑顔でこんにちはと返した、年寄りにな
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