陽炎/ホロウ・シカエルボク
になにもするつもりはなかった、それはきみの主旨とは違っていた、だからきみは歩き続けた、そのニュータウンを端から端まで…そして小学校高学年と思わしき男の子をやはり一撃で殴り殺してから、もう一度地下鉄に乗って自分の街に帰った、地下鉄に乗り込もうとするときかすかにパトカーのサイレンを聞いた気がした、きみのしたことに関係があるのかもしれなかったし、ないかもしれなかった、そしてやっぱりきみにとってはそんなことどうでもよかった、地下鉄の駅から地上に戻ってきたとき、仕事場に連絡を入れようという気分になった、スマホを取り出して適当な用事をでっち上げて無断欠勤を詫びた、きみは普段そんなことをする人間ではないので、仕事場の人間は快く許してくれた、きみは安心して電話を切った、とても喉が渇いていた、きみは自動販売機を探した―まったくこの夏は暑くて仕方がない、小銭を取り出して投入する、その渇きだけはすぐに癒すことが出来る。
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