初めて燃える山のように 前編/竜門勇気
ら虫けらが飛び出す。その後少し間をおいてのそのそとヒキガエルが迷惑そうな顔で斜面の下へ溶け落ちるように降りていった。
ギラギラと空き缶が夕日を反射した。
彼は埃なのか、衰えの一部なのかくすんだ艶のない顔で木立の影に視線をやった。
突然、耳元で大声が聞こえて身をすくませる。人のようで人でない声。
あぁ!あぁ!カラスだ。
その鳴き声から一瞬遅れて空気を叩く翼の音が聞こえた。
空き缶を咥え飛び去る姿を僕は憮然としてみていた。
これは、何かの答えではない。そう思ったからだ。
視線を彼に向けようとしたが、もういなかった。
ため息をつこうと息を吸い込んで胸が膨らむ。小屋のドアがぎい、と開いた
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