初めて燃える山のように 前編/竜門勇気
いた。
彼はこちらに一度向いて、少し微笑んだ。どんな子供より混じりけのない笑顔だった。
杖を持っている。僕が気づくと同時に彼はその先を持ち上げてカラスの飛び去った方へ向けた。
彼は、またな、と言った。
木立の向こうでああ!と聞こえた。
だから、僕は彼を師匠と思うことにした。
彼はサントリーの角瓶を僕に渡した。
ウィスキーもブランデーもジンもウォッカも混ざりあった酒だった。
僕はそれを受け取った。彼がそれを僕に渡した意味は、教えを請うものが酒をつがなきゃいけない。
それがわかったからだった。
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