中村梨々詩集『青挿し』について/葉leaf
 
の持つ柔らかい生活感であったりします。そういった、言葉の生み出すさまざまな「感じ」を豊かに感じることが詩を読むということです。
 詩はそのように、何か特定の現実に起こった出来事をそのまま描く歴史や伝記とは基本的に異なっています。歴史や伝記は必ず指し示す対象があります。現実に起こった出来事を指し示すことによって歴史や伝記は成立しているのです。ところが詩は特に現実に起こった出来事を指し示そうとしません。むしろ詩は、指し示す対象など存在しないフィクションであることが多いです。詩は現実からは離れた独立した空間を作り上げ、そこで様々な印象を作り出すのです。
 だから、詩の解釈に正解はありません。歴史や伝
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