街のもの言わぬ羽/ホロウ・シカエルボク
したりなんかしない、ちょっと酒でも呑んでるのかななんて思われて終わりだ、そもそもこんな時間に歩いてる連中は他人のアラなんか探ったりしない、人知れず歩くやつらは皆、自分の為だけに生きるのが好きなのさ、なにか飲みたかったが自販機の灯りはどれも遠過ぎた、家に帰るまで我慢して水でも飲んで寝ちまえばいい、もうそんなに距離もない…巨大な河の堤防沿いをずっと歩いている時に、ふっと地面が無くなった気がした、それまで歩いてきた道、生きてきた場所がすべて曖昧な記憶に変わった気がした、俺はしばらく立ち止まってそいつをやり過ごさなけりゃならなかった、若い時のようにそれは重さを持ちはしなかった、なにかを強いるようなものでも
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