街のもの言わぬ羽/ホロウ・シカエルボク
 
り易いし、おまけに人知れずにいろいろなことが出来る場所がたくさんある、だから街の連中のほとんどは古い港を忘れている、だから俺は少し無駄に歩きたいときはいつもここに来るようになった、もちろん、俺以外にもそんな人間は何人かは居て、同じような時間にぶらぶらしていることもある、だけどそんな時間にそんなところに居る人間は決まって変わり者だから、特別コンタクトを取ることもなく思い思いに時間を過ごしていつの間にか帰る、今夜もそんな夜だった、猛烈な炎のような潮風に炙られ続けて朦朧としながら、俺はのんびりと家までの道を歩いていた、数週間前にとんでもない数の人間を巻き込んで歩道に乗り上げたタクシーはまだ邪魔にならない
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