鬼灯/こたきひろし
時間と空間の間をすり抜けていけたわけではなかった
庭の隅に鬼灯の袋が紅く色ずいていた。
佐代は十三歳。彼女が棲む界隈では名の知れた商家の一人娘だった。
噂では、両親の間の実子ではなく何処かの未婚の若い女が孕んで産んだ子供を乳飲み子のまま貰い受けて養女にしたとか言われているが真偽のほどは解らない。
商家の大きな庭の隅の鬼灯は季節が来るのは佐代の楽しみであった。鬼灯の色づいた袋の中から赤い実を取り出して縫い針を上手に使い中身を抜いて空にするとそれを口に含み舌を使って鳴らすのだ。
佐代は鬼灯の実を鳴らすのが好きだった。
庭は外の通りと垣根で仕切られていた。佐代が鳴らず鬼灯の音に若いサムラ
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