きみはなにに殺されたんだろう/田中修子
ているように生きていた。
母に似てきみを愛さなかったその恋人のつぎくらいに、私はきみのことを知ってたんじゃないだろうか。
たくさん私にサインを出してたんじゃないか?
いや、出してたじゃないか。
きみがからだをなげだしてきみがまもった家族も、きみの親戚の宗教の上のほうの人も、人助けが趣味の私の両親も、きみを見落とした。
私も見落とした。
金が、地域性が、学歴が、酒が、あわない精神科医と投薬が、宗教が、セクシャリティが、なりたかった職業が、祖母の死が、恋人との別れのタイミングが、年齢が、もしかするとろくでもない私という友人との出会いが、きみを殺した。
この世でいちばん
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