失くしたらくがき帳/田中修子
 
くは、なにひとつかわってやしない。
いまだ、背の伸びるような骨が軋む音がする。
そんなの、よくないのだけどね。ぼくの、このおさなさは、じぶんですらひどく気味のわるい、こっけいじみたものに思えるときもある。
(ほんとはちょっとずつ、背骨の折れてる音だったらどうしようか。
コキリ、コキリ、コキリと澄むような。歩けなくなったら? そのときはそのときさ、さらさらの骨もけっこう砂みたいできれいさ)

……おとなになったからとて、なにかうつくしく、すばらしいものになるわけでは決してなかったのだ。やりがいのある仕事や勉学にすべてをなげうち、家庭を持ち、芸術を愛し、人のいうことにおだやかに耳を傾け、正
[次のページ]
戻る   Point(6)