のぞみの受難/ペペロ
り、落ちてきたり、考えてみたらむちゃくちゃだ。ばかにしてる。
のぞみはいつかこの道に埋められて、これからこんなことがいっさい起こらないよう、じぶんが生け贄になるような気がした。するとまたしっかりと走れた。目の前がきゅうにはっきりとして、指のふるえがやんだ。
生け贄のことを考えると、体がしっかりするのかも知れない。
生け贄になったらみんなじぶんを踏みつけては感謝もするだろう。でもやがては踏みつけるだけになるだろう。
生け贄のことを考えつづけていると、またしっかり走れなくなった。のぞみは空気に溶けて、生きている実感が抜けていくようだった。
感謝はいらないのに、だけど感謝されなくなるのもいやだ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)