のぞみの受難/ペペロ
やだ。こんな妄想って、生け贄になることがほぼ決まってるみたいじゃん。
自転車に乗ろう。のぞみは駆けながらつよく思った。
生け贄なんかいや。逃げてなんかない。のぞみは立ち向かうように走った。買ってもらおう。のぞみは自転車をこぐように走った。
足がまわる。くるくるまわる。両うでのあいだにまっすぐな道。呪われるまえのまっすぐな道。
自転車をこぎにこいだ。足が浮いていく。サドルにおしりをのっけている感覚がない。宙に浮いて、風に溶けて、空気に溶けて、生きている実感が抜けていくようなのぞみの気持ちがぺろっとうらがえった。
生き抜いてやる、そう思った。
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