詩は記録される雨音/ホロウ・シカエルボク
 
隠れて
それが生きていた時代のことを思う
もう誰もが忘れてしまって
緩んだ床や崩れた壁なんかには思い出すことなんか出来ない
そんな凍てついた時間のなかに座り込んで
自分がもしも廃墟であったとしたら、と俺は考える
どんなものを使って過去を語るだろうかと
床に散らばった衣類や
残された雑誌みたいなもので語るだろうか
それとも破れて垂れ下がった天井クロスや
歪んで動かなくなった引戸などでそれを語るだろうか
そこに誰が訪れるだろうか
そこにどんな噂が生まれるだろうか…
窓の外から少し覗くだけで
美しい調度品がずらりと並んでいるような
そんな廃墟でなくて良かった
語らぬまま判
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