詩は記録される雨音/ホロウ・シカエルボク
 
流れて居なくなったところで
誰かの人生の水捌けがよくなるわけではないのだけれどね

昼間には気も狂わんばかりの湿気が辺りに立ちこめていたけど
日が暮れると季節が逆戻りしたのかと思うほどに涼しい
風邪なんか引かないようにねといろいろな人に注意されるけれど
風邪を引いたのなんてもう五年は前のことだ
子供のころは熱を出すたびに見ていた奇妙な夢も
今じゃほとんどの場合は記憶の抽斗のなかに眠ったままだよ

おそらく人は
過去があるからこそ生きるのだ
そこに残してきたもののことをもっときちんと知りたくなって
これから始まることのなかにそいつを探してしまうのだ
俺は時々廃墟の中に隠れ
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