草の歌 ?/flygande
に忍び込んだ小間切れの命が肉を突き破って芽吹くなら、この体からもういちど野を始めたい。小石がひとつ崩れ、乾いた頭骨をこつんと打つ。眉間から一輪の竜胆が咲く。大事なことはみな深い場所に埋められて、忘れられたころ春になる。借金取りは鹿の姿をし、債務者たちを正しく花野へ連れていく。
くさきりはら橋、橋を渡る。やがて村は終わり、橋脚は崩れ、礎石は割られ、土塁は破れ、水は枯れ、鳥達は散会し、あとには空だけが残される。夜、見上げればそこに橋はもう無く、はじめから闇であったもの、いつしか闇となったもの、暗い宇宙に炭酸のように溶けている。ここに佇み、私が夜を見上げている。どこからとなく現れた孤独な蛍が、どこ
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