草の歌 ?/flygande
どこへともなく消えていく。その残照に私は私が私であったことを知る。草切原橋、それはこの風。草切原橋、それはこの夜。体と心を交換し、どこへともなく消えていくための。私の背中を誰かの角が優しく掻く。隠された水脈のありかを伝えたがって。振り返らず、ただ謝辞を述べて私は息を引き取る。朝になれば光を走らせ、緑の塋域(えいいき)どこまでも拡がっていく。私たちみなこの墓場から生まれた。足を返し、水色の蛇となって新しい野を探しに行く。目を開いたら、その空にまた伸びやかな名前をつける。
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