老人/ただのみきや
 
紛れていた
財布の中身とカレンダーが歯車のように噛み合って
老人は絡繰り人形のように月に一度あるいは週に一度
決まった場所に出かけほぼ決まったものを買う
あらゆるものが短くあらゆるものが長かった
――蝶が飛び回るいつも同じ蝶が
こんな店の中でもおれの目を引き付けて見えない方へ――
蝶は自分の頭の中から現れる 
そう老人は見当をつけていた
レジを通る時は一番きれいな若い娘を探す
どんなに混んでいてもじっくりと顔と手を見た
そうして心の中でシを読んでみる
だが釣り銭を受け取る時にはいつも言切れて我に返った
右手の小指と薬指が思い通りに動かない
若い頃からそうだった
つまむ
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