貯蔵庫が騒々しい―たとえそれを完璧に閉じ込めていたとしても。/ホロウ・シカエルボク
 
ないんだよ。それはたとえば風の色に名前を付けようとするようなものだ。決めてみたところでそれはきっとどこかしっくりこない感じがするだろう―貰い物の洋服を初めて着用してみたときの感じと同じさ。だから俺はそうしたことにこだわるのはとっくの昔にやめにした。疑問としては当然だけれど追及するのは正解じゃない。それは疑問のままで置いておけばいいことだ。そのうち疑問ですらなくなるものだってなかにはある。だけどね、俺、昔読んだことがあるんだ。あるミュージシャンのインタビューだったんだけど…「忘れるっていうのは才能のひとつなんですって。人間っていうのは忘れていかないと気が狂うらしいんですよ。」それを読んだときには少し
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