GIRLS OFF/佐久間 肇
た。
おふざけをしていたつもりが、ひどく叱咤されて
へそを曲げて拗ねていた。
少女のお腹の中では、とうにりんごが熟れて、甘い匂いを発していた。
生みださなくては。アレを。あれを。
りんごがお腹の中で熟れていく。
そして、大きく大きく、膨らんで。
少女のりんごは赤くもなれないまま。
急ぎすぎてしまったの。
まだ。まだ。間に合わないわ。もうーーー。
少女は、好きだったあの人のことを考える。
少女にも初恋があり、二度目の恋もあった。
そうして気がつくと、少女ではなくなっていた。
「あっ」
好きだった人の顔を思い出そうとしても、
どの顔のことだった
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