二月からのこと/山人
 
し崩してゆく

釈然とするものが何一つない真夏の炎
それはすべてを燃え上がらせ
骨も髄も溶かし
念じたものをも溶かしてゆく

*

あらゆる裸を晒し続けた真夏だった
饒舌にまくしたてる命の渦
夏はすべてをあらわにし
やがて鎮火した

隔絶された山岳の一角で
口も利かず
私は一人で作業をしていた
何も無いその佇まいの中で
私は何と戦っていたのだろう
でも確かに戦っていたのだった

少なくとも日没は一時間は早まった
夕暮れ近い山道を登り返す時
うすい靄がオレンジ色に差している

ホシガラスが滑空し叫ぶ
断崖を蹴るように降下し
再び上昇した
いくつ
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