二月からのこと/山人
でいた
さび止めをし忘れた
私のねじが
コロコロと
助手席の上に
転がっている
*
深い霧がうっすらと見える
まだ明けきれない朝
ニイニイゼミの海が広がり
その上をヒグラシがカナカナカナ、と
万遍なく怠惰が体を支配し
私はその中をぷかりぷかりと泳いでいる
上空には巨大なウミウが舞い
血だるまの現実がホバリングしているが
私の心は心細いマッチ棒のようで
ぶすりぶすりと煙い火をかすかに灯している
私は
またこのように道を失い
いつ来るともしれない
風を待っている
八月はまたやってくる
夏の痛々しく残酷な暑さは
あらゆるものを溶かし崩
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)