二月からのこと/山人
 
のを平坦に均し
雨は果実のように地面に注ぐ

やさしさや安らぎは
雨から生まれ
やがて血液の中に混じり込んで
やわらかなあきらめともに
人ができてゆく

*

七月の
少しむっとした空間があった
上空ではまだ
とぐろを巻いた怪物が
大きく交尾をしているという

集落のはずれは
言葉を使い果たした老人のようで
かすかに草は揺れ
どことなく
小さな虫が飛翔していた

他愛もない会話の中で
使い古しの愛想笑いを演じ
私は居場所のない場所に居たのだった

なにもかもが濁っていた
七月の
まだ梅雨空の上空は
肥大した内臓のようで
大きく膨らんでい
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