二月からのこと/山人
 
の結実を促すように泳いでいる

命の蓋がひらかれる
スイッチを入れられた生き物たちはうごめきまわり
生をむさぼっている

五月は裸の王様だ
どんな生き物も性器を陳列し
淫靡な香りと誘惑の痴態を広げている

農民は田へ田へと
呪文のようにリピートし
土のにおいにおぼれている

車は疾走し続ける
五月の空気は錬金術師
後方のナンバーには
「五月」と記されているかのように

*

六月の雨音が聞こえる
今は空のうえで
六月の雨が育ち
きっともう
豊かに実りはじめているのだろう

誰もが六月の雨を待っている
やさしく皮膚に染み入り、
あらゆるものを
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