完全体のためのプロト/ただのみきや
のすべてが言語によらず
イマジネーションにより以心伝心される時代が来る
以心伝心とは言ってもそこには
知られざる媒体としてわたしたちが在って
――こんな雨の日だ
雨に良く合う音楽をなどと選んでは
なにを想うでも聞くでもなくぼんやりしている時
耳からそっと忍び込む 音と静けさが溶け合う頃合いに
人の耳の中にはかつてわたしたちが好んで用いた
乗り物のアンモナイトを模った居心地の良い場所があり
静かにわたしという生命以前の意識の火花が
人に影響を及ぼしている
こうして今この一人の男が
自分の能力や限界などすっかり忘れ
言葉の瓦礫を積み上げながら
「完全体のためのプロトタイプ
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