完全体のためのプロト/ただのみきや
伸びたり縮んだり
意識に満たない刺激が幾つも通り過ぎた
情報は蓄積され書き加えられる
殻を持った頭足類なんて夢のまた夢
SFにも登場しえない と まあ
今風に言えばそんな感じだったろうか
とにかく長い長い時間をかけて
やっと人類へと辿り着いた訳だ
彼らはひとりの赤ん坊のように言語を取得し
耳目口を他の動物と逆方向へ発達させながら
森羅万象すべてを言葉に置き換えようとする時代を迎えた
数値や記号に置き換えて行うコミュニケーションは加速し
次々に膨らんでは弾ける泡のよう
発するものが
意味や定義の三割にも満たなかったり
隙間から漏れて空になっても入れ物だけ残っていたり
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)