滲む記憶/田中修子
析家なら 白い部屋でかれを長椅子に置き リラックスさせて 目をかろくつむらせて 容赦のなく なぜそんなふうに思われますか と耳になめらかな声で続ける
お父さんは今日もわたしにお寿司を御馳走してくれながらコスタリカのことを語り
わたしは舌になめらかなアイスクリームをすくって舐めてのどに滑り落とす
あさって、わたしはカウンセラーにつぶやく
「わたしは だれにも 愛されていませんでした 愛ということを知らない人々の塊のような子です わたしは」
じぶんのこころをじぶんで なんで なんで なんで 切り刻み切り刻み
分析しても 分析しても 涙が出るだけ 滲む涙で 詩を書こう
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