滲む記憶/田中修子
 
おとうさんとおかあさんを そんなふうに恥に思うの? 

おとうさんは 黙る そうしてあかるく
つぎの奥さん候補のことを語りだす

(否認の感情が とても つよい)

しっかり育ててくれたと父は 思い込もうとしている けれど父は それ以上記憶を戻れない 

否認をした

壊れてしまうから

いちどもおかあさんにもおとうさんにも叱られたことがなかった お手伝いさんや親せきや父の姉が 彼の面倒をみたが
かんしゃくを起こしては道でひっくりかえって泣くような子どもで 心配はされていて
父の父は 彼に成功へのレールを引いた なんなら奥さんまで 用意されていた

わたしが分析家
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