ほんとうに言いたかったのはたぶんそんなことじゃなくて/ホロウ・シカエルボク
 
るまでにこれだけの時間が必要だった、それだけさ」
それはわりに上手い言い方だと思った、まだ思春期がなみなみと注がれていたころの
レオス・カラックスの映画みたいだった
上手過ぎて気に入らないくらいだった
ふん、と彼女は中立的な調子で鼻を鳴らした
「あなたははじめてわたしを納得させるようなことを言ったわ」
ふん、とぼくは自嘲的に鼻を鳴らした
「それを言えるまでにいままでの時間が必要だったのさ」
彼女はそのとき確かにノーと言いたそうな顔をしたけれど
そこには寸前でとどめなければならないなにかがあったようだった
それからぼくたちはさほど親しくない知人みたいに天気の話を少しして
彼女は
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