春と酒乱/ただのみきや
 
の手紙なら
それが火にくべられ燃え尽きる間際の
淡い光に包まれた闇の中に見え隠れする
地下水のような女の顔は何を告げているのだろう
プランターに寄せ植えにされた花たちの色彩
乾く暇もなく視線は滲み洗い流すことも儘ならず
混じり合い重ねられ完成することのない季節


物事が囁きかける隙間から
そっと差し出される手
美しい身体から逃げ出した小さな獣のように
思考の影に巧に絡みついた
愛を錯覚させる 乱暴に純粋に
壊すために作られる愛の模型
腹から胸そして顔の裏側へ浸み上る水
水の微かな照り返しが
絶えず冷たい雫を纏っている
ブリキのような笑いにすら


五月の
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