春と酒乱/ただのみきや
月の連休は石灰化した自分を愛し
地下へと下って往こう
だが扉を開けばいつでも今が在って
セメントの海で溺れる人魚を救おうともがくのが関の山だ
そうしてこれらの戦いの中で
ふと虚ろな額縁であること
いつまでも終わりのない鳥の羽ばたく気配と
からだの芯の一本道を見えざる力で引き抜かれ
内なる奈落へと墜ちていった叫びのこだまが
埋葬されている切り立った墓石の手触りと
喪失と空白だらけの地図を拡大鏡で眉間に引き寄せながら
刹那 遠く逃がした鳥の影に
地上ではさらし首のように恨み言の一つも言いたげな
過去の鏡へ引っ越したばかりの願望が
オルガン伴奏に運ばれて往く着飾った幼子たちと共に
浄化の過程を装っている ――突然
すべての嘘が燃え上る
葬儀の白花の海へ投げ込まれた
深紅のバラのように
香りすら手繰り寄せて
《春と酒乱:2018年4月21日》
戻る 編 削 Point(6)