春の太鼓/まーつん
ゥードゥーの呪術師のようだが、
この人こそは、すべての父であり母
その力強い手が大地を叩くたびに
木々の枝から雪が払い落とされ
眠っていた地中の虫がびっくりして飛び起き
再び歌うべき愛を思いだした若い雄鳥は
連れ合いを探して広い野に飛び立つ
神の手が大地を叩くたびに
古いしきたりに支えられた王国は
老人の頭の中で崩れ落ち
黒く沸き立っていた憎しみは
拗ね者の瞳から剥がれ落ち
蒸発していく
世界を覆っていた
憂鬱な垂れ幕が落ちて
不意に立ち現れる世界は
新鮮な果実のように熟れて
鮮やかな天然色に彩られ
希望を投げかける
そして
僕もまた目覚めた
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