あの頃と同じように赤い/ホロウ・シカエルボク
 
響き続けているみたいな音楽さ
そうとも、おれの人生は
ずっとそんなようなものだったんだ
昔っから喋り過ぎるくせがあった
特典映像が本編よりも長い映画のDVDみたいに
綴った言葉よりも語った言葉のほうがずっと多かった
(もしかしたらそれは騙っていたのかもしれないね)
インスタントコーヒーを飲みたいと思ったけれどもう歯を磨いてしまった
だから苦々しいなにかを思い出そうとして
痴呆症の老人が障子を破るみたいにキーボードを鳴らしている
まだ買って数年あまりのそのノートパソコンのキーボードは
どういうわけか「A」のキーだけがほんのすこし浮いている
言葉はからになることがない
もう二
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