出涸らしの慕情/笹子ゆら
 
パンドラ という名の
触れたような気がする
水のように滑らかに落ちて
道をつくる



お金を入れたらジャンジャンバラバラ落ちてくるわけでもない
銀色の玉が増えるわけでもない
なにも出てこないことだって
そうした ギャンブル みたいな世界で
誰かを好きになるのなんてやっぱり困難だから
掌の中には百円玉が握られたまま


落ちた、ような気が、した。私の世界へと。あなたのいう場所が。落ちた、ような気がした。掬い上げて、みようとしたけれど、あんまり、ほんとうにあんまり、きれいではなくって、私はその流動体を、捨ててしまいそうになる。でも、どうにか、あなたを、見えなくなっ
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