朝陽のあとで/ホロウ・シカエルボク
 
ながら、つま先の少し先だけを眺めて歩いた、砂利のような音をさせていたのは、割れた瓶の欠片ってわけさ、判るだろう、午前二時に表を歩いていると目に入るのはそんなものばかりさ、もう少し早い時間なら、ギターを抱えて歌っている傷のない連中を目にすることだって出来るけどね…なあ、信じられるか?自分の人生にそんな過去があるってこと、十年前、二十年前…そんな昔が自分のなかにだってあるってことがさ―長いこと生きれば、そんなことには慣れると思っていた、でもそんなことはない、いつだって驚いてばかりさ、もしかしたら俺にはそれだけの時間を生きたっていう自覚がいつだって足りないのかもしれないね、妙に全速力のタクシーが走り去る
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