朝陽のあとで/ホロウ・シカエルボク
 
相だ、「ブルックリン最終出口」でしょっちゅう出てきたあの景色さ、あれはあんまりいい映画じゃなかったけどな…だけど、もしかしたら小説よりもいい話ではあるかもな―表通りを吹き過ぎる風が夜明け前の湿度を運んでくる、この街のミストは俺にろくなことを思い出させはしない―飲み過ぎたのかって?いいや、信じてもらえないかもしれないけれど、酒なんかここしばらく一滴も飲んじゃいないんだ、こんな時間にこんなところを歩いている人間の中にも、素面なやつが居るってことだよ、覚えておいた方がいい、こんなリトル・ワールドにだって、想像のつかない出来事なんていうのはごまんとあるんだ…フランク・シナトラの古いナンバーをハミングしなが
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