だから君はささやかに赤く光るセンサーに手をかざせばいい/ホロウ・シカエルボク
しい
清掃スタッフのジャンパーを着た中年の女が
水道代が心配になるくらいの水をかけている
長いこと口の中に入れたままのガムが
瀕死の捕虜のような音を立てて唾液を絞られている
戒厳令は日常茶飯事
戦争でもない限り撃たれるのは後ろからさ
アダルトビデオの看板を堂々と掲げる店舗の駐輪場で
三本脚の犬がこちらを見つめていた
視線はインク切れのコピー機みたいで
ひたすらに白紙を吐き出していた
まるでこちらになにかしら書き込む義務があるとでもいうように
やつの眼球は一ミリも移動しなかった
たとえ無軌道な子供らがきちがいじみた声を上げながらすぐそばを通り過ぎても
ダヴ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)