おだやかな道にとどまろうとしたって/ホロウ・シカエルボク
 
近付いてきた
「こんにちは」「ああ、こんにちは」
銀色の髪の、小柄な人だった、物腰は柔らかく、綺麗な身なりをしていたが、なにかが非常に散漫になっている印象を受けた、お散歩ですか、と彼女はそんな俺の目を覗くみたいにかがみこんでそう聞いた
「ええ、少し歩き過ぎました」
判ります、と言うようににっこりと笑って、彼女は俺の隣の車止めに腰を下ろした、そして、自分の履いているスニーカーのつま先を糸をねじるように撫でながら、少しの間何も言わなかった、それから、思い出したように顔を上げ、後ろの建物を指さした
「わたし、ここでお店していたんですのよ」
そうですか、と俺は答えた、彼女は嬉しそうに頷いて、話
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