上手く眠れないのならなにかほかのことを/ホロウ・シカエルボク
いを抱えていたのに
いまではまともそうな客をどれぐらい拾えるかということだけを考えている
四番街の角で誰かが手を上げる
アリス・クーパーの後ろでダンスでも踊ってそうな若い女だ
彼は若いころアリスのファンだったので思わず女に向かってそう言った
女はふんと鼻を鳴らして
「それも悪くはないけど」
「マリリン・マンソンよ」
「あっそ」
男は運転手に戻って行く先を尋ねる
「まだ決めてないの」と女は言う
「あのさ」と男はエンジンを切る
「からかってるんなら降りてくれよ」
違うの、と女は静かに言う
「ノートを買いに来てて…それはもう買ったんだけど」
「なんだかまっすぐ家に帰る気にな
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