上手く眠れないのならなにかほかのことを/ホロウ・シカエルボク
 
にならなくて」
「そうだわ、しばらく大通りを流してよ、あまり飛ばさないで―わたしが家に帰りたくなるまで、何度も何度も走ってくれない?」
男は鼻からため息をつく
「それがタクシーの役目かどうかわからないけど」
「今日はあまり売り上げが良くないからな―金は持ってるんだろうな」
女は当然よ、という顔で頷く
「それなら仕方ないな」男は再びエンジンをかけて、アクセルを踏み込む

草臥れた夜が始まった大通りを、目的のないタクシーはゆっくりと進んでいく
二人にそれ以上の会話はなく
タクシーのエアコンには十二月を駆逐するだけの意地がない



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