上手く眠れないのならなにかほかのことを/ホロウ・シカエルボク
 
二人の男女が
嫌になるくらい憎み合って汚い言葉を浴びせ合っている
数十分前までは嫌になるくらい仲睦まじい恋人同士だったらしい
挙句の果てはWWEのレスラーみたいに張り手を打ち合って
スツールを蹴り倒しそうなほどの勢いで着飾った女は店を出て行った
着飾った男はバーテンに勘定を払いながら騒がせた詫びを言う
バーテンはほんのわずかな首の動きだけで
「なに、よくあることですよ、誰も気にしちゃいないですよ」
と語る
エルビス・コステロの猛毒を含んだポップスが流れている

イエロー・キャブを流している中年の男は
衰え始めた自分にいらだちを隠せないでいる
この街に来た頃には様々な思いを
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